マンションの寿命について | 新宿区・千代田区・文京区の不動産のことなら神楽坂上不動産

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不動産コラム

  • 分譲マンションの寿命について


    昨今、都心部を中心に中古マンションの内装を全面リフォームした「リノベーションマンション」が「新しい住まいの選択肢」として注目され、その地位を確立しています。
    それに伴い「マンションの寿命って何年?」「いつまで住めるの?」というご質問を頂く機会も非常に増えてきましたので「マンションの寿命」についてまとめてみましょう。


    ■RCの寿命は100~120年?それとも47年?
    よく鉄筋コンクリートの耐用年数は?と聞くと「47年」という意見が聞こえてきます。しかしながらこの年数は、主税局が定めた税法上の法定耐用年数(減価償却年数)であり、建物の寿命とは全く違う概念の年数です。
    例えば、同じく主税局が定めた法定耐用年数だと「木造住宅は22年」「自動車は6年」「パソコンは4年または5年」と定められており、どれも実際に使える寿命よりは、だいぶ短い年数で定められています。この耐用年数(減価償却年数)は、仕事で使う車を300万円で買った場合、その経費はその年1回で経費計上せずに6年に分けて50万円ずつ経費計上(減価償却)させなさいという目安です。まず抑えておきたいのは「47年=建物寿命」ではないということです。

    鉄筋コンクリート(RC)の寿命については、国土交通省「中古住宅流通促進・活用による研究会」のレポートでは概ね120年とされ、鹿島出版会「建築の維持管理(飯塚裕)」によると概ね117年とされています。

    また日本建築学会が2004年、2009年に公表したデータでは、更に詳細に「コンクリかぶり厚さ3センチで65年、4センチで100年」という年数を示しており、表面を保護すること(タイル・塗装)や定期的なメンテナンス(修繕)を実施することで100年以上の耐用年数を確保できるとしています。

    コンクリートの「かぶり厚さ」とは、コンクリ表面から内部の鉄筋までの距離のことで、鉄筋コンクリートは「水とセメント」が混ざる事で生じる水酸化カルシウムにより強いアルカリ性となり、内部の鉄筋がサビることを防止しているのですが、コンクリートは空気中の二酸化炭素と触れることで炭酸カルシウムを生成し、表面から徐々に中性化していってしまい、これがコンクリ内部の鉄筋にまで達すると鉄筋がサビ始めてしまいます。このことから「かぶり厚さ」が耐用年数に大きな影響を及ぼすわけです。

    分譲マンションの外壁をタイル張りにしたり、吹き付け塗装をするのは、この「コンクリートと空気が触れる」ことを防止するのが主な目的で、大規模修繕や外壁補修の際には、タイルの隙間の目地を埋め直したり、吹き付け塗装をし直す事で、コンクリートの寿命を延ばす取り組みをしているわけです。

    以上のように、現在ではマンションの基本となる躯体部分(鉄筋コンクリート)の寿命は、概ね100年~120年という見解が一般化しています。

    実はリノベーションマンションがこれだけ普及し、若い世代の方が築年数の古いマンションを安心して買えるようになったのは、今から15年ほど前に発表された日本建築学会の発表や、国土交通省による研究レポートの結果によるものが大きいと言えます。それは、これらのデータをもとに各銀行の「住宅ローンの規定」も大きく変更されたからです。



    ■10数年前までは築年数が古いと、長いローンが組めなかった。
    実は、RC住宅の寿命が100年程度と認知されたのは、ほんの15年程前のことで、それまでは我々不動産業者も、所有者(マンション管理組合)も、金融機関も概ね50年~60年程度という認識でした。日本の民間分譲マンションの歴史はまだ60年程度しかなく「実際に老朽化した建物」が少なかったので「おそらくこの程度だろう」という判断と、30年~40年で建替えられるマンションもあったことが、そう考えられていた理由です。
    そのため以前の住宅ローンの規定は、ほとんどの金融機関で「45年ー築年数」という年数しかローンが組めない規定でした。築35年なら住宅ローンは10年返済(一部の銀行で15年返済)までOK。こういう規定だったわけです。

    長いローンが組めないことが理由で、築年数の古いマンションは流通しにくい面もあったのですが、今から10数年前には、多くの金融機関がマンションの経済的耐用年数・物理的耐用年数に対する考えを更新し、ローンの規定も変更しました。築40年でも35年のローンが組めるようになったので、月々返済額も抑えられ、若い方でも購入しやすくなったわけです。


    ■35年、40年で建替えられたマンションがあるのは何故か?
    ではなぜ、築35年~40年程度で建替えられたマンションがあるのか?その理由は大きく分けて3つ。一つ目は「経済的理由」です。これは、建て替えをすることによって区分所有者に資金面で大きなメリットが生じるケースで、例えば、元々容積率を余らせて建てられていたマンションなどでは、建て替える事で総戸数が増え、その新規分譲分の代金を建て替え費用に充当することで、区分所有者はほぼ負担なく新築に建て替えることができたケースもあります。このように「メリットがあるから建て替えをする」というのが、まだ建物の寿命が来ていないのに建替えられた事例の一つ目です。2つ目は「当時の建築に問題があり危険と判断された残念なケース」です。1970年台の高度成長期は建設ラッシュでコンクリートの材料となる「砂利」が不足する事態が起こりました。鉄筋コンクリートには本来「河川の砂利」を使うのが望ましいとされていますが、資材不足や手抜き工事などで塩分を含んだ海の砂利を洗って使用する事例も一部でありました。それらのマンションは内部の鉄筋からサビてしまい、まだ築30年程度なのに、コンクリに亀裂が入ったりすることもあり、そういった「好ましくない施工」をした危険な建物が建て替えを余儀なくされた事例も一部あります。3つ目は「大規模な再開発」などによるものです。これは私の顧客でも該当した方がいましたが、現在、中央区勝どきに建っている「勝どきザタワー」というタワーマンションの開発では、元々その敷地の一部に建っていた「モリス勝どきベイサイド」という、まだ築20年前後のマンションも解体されました。所有者は新しく建ったタワーマンションの1室を無償で取得できたので万々歳でしたが、このように大規模な開発によって解体(建替え)された事例もあります。
    概ね上記3つが、本来の建物寿命が来る前にマンションが建て替えられた事例の背景で、きちんと建てられたマンションで寿命の限界が来たから建替えられたという事例は今でもほぼありません。

    ■大事なのは修繕履歴と積立金残高
    以上のように、RCマンションの寿命は約100年とされています。ただし、それは「適切な維持管理(修繕)」がなされていて初めて成り立つ話しですから、物件選別の際は注意が必要です。
    大規模修繕は概ね12~15年周期で実施され、主に「外壁補修・屋上防水」「給排水管のメンテナンス」「鉄部塗装や機械式駐車場のメンテナンス」を行いますが、これらの定期的な修繕がなされていることと、今後も適正な維持管理をしていけるだけの「修繕計画」「財務状況(積立金残高)」が確立されているかが建物の寿命に直結します。
    中古マンションを選ぶ際は、この2点をきちんと確認することが大切ですが、これは「管理に関する重要事項調査報告書」という書類の中に、過去の修繕履歴や積立金残高が記載されていますので、この書類を確認することで、現在状況が把握できます。

    当社では物件をご案内する際に、上記の「修繕履歴」と「管理組合の財務状況」も事前に確認しアドバイスしていますので、ご案内・ご見学の際は担当者にお気軽にお尋ね下さい。

     


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